阿修羅判官
一世の名奉行大岡越前守も、市太郎と呼ばれた青年時代には、阿能十や中岡亀**などの市井の無頼の徒と交わり、旗本崩れの銀歯組の、刑部や赤螺三平などと争い、許婚のお縫があるにも関わらず、水茶屋の女お袖の許で放縦な生活にひたっていた。養父忠右衛門の心中を察し、お縫の悲しみに同情した実兄主殿は、市十郎を無理に連れもどした。その間に、お袖が市十郎の子供を生んだと聞いて、その子の顔見た差に、刑部たちにそそのかされ、叔父の家へ押し込み強盗の手引きをしたが、居合わせた兄主殿は赤螺のため斬り殺された。市十郎はこの**でようやく自分の非を悟り、兄の墓前で自害しようとしたのを養父にとどめられ、生まれ変わって新生活へのスタートをした。そして十数年、今や、南町奉行として、将軍吉宗の信任厚く、名奉行として知られはじめていた。その頃江戸を乱す五人組の兇盗があり、これを捕らえることが...