北穂高絶唱
川崎の工場で働く**は明るい女工の志乃を知り、恋をした。同じ職場の健吉も志乃に好意を持っていたか、親友同士の二人にはライバル意識はなく、お互いに、山男らしい友情で結ばれていた。一方、工場の経営者で**の遠縁にあたる大作は**に冷淡だった。**は社長の親類ということで、工場で地位のある職種を期待していたが、それも無駄だった。しかし、大作の妹のかずみは**の野性的な魅力に惹かれていた。ある日**と健吉は北穂高に登った。ザイルで結びあった二人が山頂を目前にした時、突然、健吉がスリップした。**は健吉の落下をくい止めるため反対側の斜面に身を躍らせたが、途中に突起する岩角にザイルが切断され、健吉は岩角に激突した。この遭難事故のショックで、**はすべての記憶を喪失してしまった。**の傷は治ったが、過去を失って無性格になった**は、かずみのロボット同然になってしま...