関東破門状
大正末期。関東梅島会の総長である梅島甚兵衛は、震災で焼けた吉原遊廓にかわってひらけてきた亀の井の治安を守るため、南を黒田一家、北を竹内一家と二分し、それぞれの縄張りを治めさせた。黒田一家の小頭、秩父弥三郎は一家の大黒柱として評判もよく、親分万吉の信頼も厚かったが、弥三郎を慕う万吉の娘美恵に横恋慕する代貸の古野は、竹内組に内通し、万吉の印鑑を持ちだしては弥三郎の名義で竹内から金を借り私腹を肥やしていた。一方の竹内も、亀の井の独占を企み、弥三郎を消すべく、関西の流れ者火の玉五郎を使って闇打ちをかけ、さらに、事をあらだてまいという、万吉の態度をいいことに、弥三郎の弟分久五郎の恋人で女郎のお米を、病気の同僚をかばった罪で私刑にし、助けに入った久五郎にも因縁をつけてきた。みかねた弥三郎は自ら進んで制裁を受け、事を解決しようとしたが、ききいれず久五郎に重傷を負わ...