蛇姫道中
文化六年の江戸の正月、猿若町の松の内、当代随一の人気若女形瀬川菊之助が突如行方不明となった。事の起こりは下野国烏山の城主大久保忠成は**深く、その上重病の床にあって、ひたすら陰陽師の祈祷を守っていた。忠成の娘琴姫は年月日時共に己の生まれで、蛇姫とも呼ばれ、絶世の美女であったが、この姫を是非嫁にと執心する岡崎の本多家は、烏山の国家老佐伯隼人と密約を通じ、忠成の**を利用して陰陽師を買収して、忠成の病気は城の天守閣の弁天祠の鐘の紛失が原因で、神の啓示によりその鏡は本多家のもとに飛び、琴姫が本多家に輿入れすることによって病気もたちどころに平癒する。もしこれを拒めば、忠成の一命は勿論、城や領内にも災難がかかるといわしめたのである。忠成は勿論姫を直ちに岡崎家に嫁ぐ様に命じた。しかしこの*計を知った岡部内膳は一計を案じ、瀬川菊之助を誘拐し、琴姫を天守の密室に隠し...